第17話 刀剣との出会い

執筆者 : 加藤 博司
今回の『第十七話』は「刀剣との出会い」について加藤支部長に執筆いただきました。

 昭和31年9月23日(秋分の日)場所は名古屋駅 名鉄百貨店3階特選サロン 16才の私がその日、何の目的で百貨店を訪れたのか今は定かでは無いが、3階イベント会場の入口に行列が出来ており、何気なくその列に付くと、現れたのは‘武将とその愛刀’「剣美展」でありました。図録で確認すると、日本美術刀剣保存協会名古屋支部の第1回の「剣美展」の開催が行われていたことを知ることが出来ます。

 歴史で学んだ武将の所持品を目の前にしてタイムスリップの中に誘われて、刀剣の美しさと歴史上の武将が結びつき、説明し難い感動に浸ったこと、強烈な印象が今も残っております。

 帰宅してその体験を父親に熱く話しましたところ、戦前刀剣を収集していたことがあったと言われ、古びた一冊の書籍(藤代義雄撰 刀剣便覧)を見せて貰いました。刀剣は赤紙が来た為処分して入隊したと聞きました。

図譜
図譜

 時が流れ昭和36年頃、父親の刀剣への思いが再燃したのか、刀剣店巡りが始まり、僅かの間に10口ほど収集出来ました。 日本美術刀剣保存協会の刀剣鑑定審査会が中区栄の名古屋美術クラブの会場で開催されることを知り、早速審査を受けに持参しましたが、結果は1口が丸特、あとは偽名と再刃でした。

 私の落胆ぶりを気の毒に思われたのか、担当されていたオジサンに「刀剣は偽物が多いから、君はまだ若いから勉強してから買わんとイカンよ」と言われ、毎月、鶴舞の名古屋市公会堂で名古屋支部の研究会があることを教わり、昭和38年、父親と弟の3人で公会堂通いが始まりました。その時話しかけ、紹介してくださったオジサンは長久手の山田 斎先輩でした。

 それから名古屋支部に入会して60年刀剣との付き合いは続いておりますが、その間多くの良き先輩、同僚にご指導ご協力をいただきました。 誠に残念なことに自然の摂理か、冷泉に旅立たれましたが、先人の残された業績が今の名古屋支部の礎になっており大変有難いことです。

 刀剣を鑑賞している時が私の至福の一時ひとときで有ります。今後この幸せを多くの人々に広げて良き同好の仲間つくりを続けていきたいと願っております。

’刀剣は永遠なり’

令和4年12月10日 名古屋支部 加藤 博司


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