第11話 短刀の拵えを作る(黒呂色塗鞘合口拵)

執筆者 : 松本 愼一
今回の第十一話は「短刀の拵えを作る(黒呂色塗鞘合口拵)」と題して、名古屋近郊にお住まいの松本愼一さんにご執筆いただきました。

「拵えを作るきっかけ」
 平成20年11月東京にて埋忠の短刀を購入したのであるが、それに見合う拵えが欲しくなり、今回の拵えを作るきっかけとなった。

「拵えに使用する金具を探す」
 埋忠の短刀(桃山時代)の時代に合う金具探しから始めることになり希望としてはその時代の後藤の五三桐紋壺笠目貫と、同じく桐紋の小柄である。 東京を始め、いくつかの刀剣店を探し回ったのであるが、一年以上探しても希望に合う金具が見つからず、困って支部で小道具に詳しいTさんに相談したところ、快く心あたりを探してみますとの返事を頂きお任せすることにしました。 お願いして、しばらくしてからTさんより希望に合った金具が見つかりましたとの連絡を受け、早速拝見させていただく機会を設け,お会いする事になりました。 Tさんに探して頂いた金具はほぼ希望に合う物で、状態も非常に良かったので、即購入を決めました。

後藤五三桐紋壺笠目貫
後藤五三桐紋壺笠目貫
古後藤五三桐紋五双小柄
古後藤五三桐紋五双小柄

「拵えの作成」・・・・(1)下拵え
 拵えを作成するにあたって、どこにどうして依頼してよいのかがわからず、これも刀友のTさんに頼んでおいたところ、東京のS刀剣店に作成する職人さんを指定して作るのが良いとのアドバイスを受け、それにならって平成23年の1月に上京し短刀拵えの作成を依頼しました。

 S刀剣店にお願いに行った時には既にTさんから連絡が入っており、参考になる拵えの資料や古い鞘の見本も届いておりました。 すべてTさんの計らいによるもので、小道具研究家Iさんが直接S刀剣店に参考資料にと持参して頂いた物でした。 その際には拵え作成の詳しい指示もなされており、本当にTさんの心遣いに感心したものでした。 参考にした拵えは利休拵え(千利休が所持し、今日庵裏千家に伝来)で、目貫・栗形・返角の位置もその時代に合わせ、下拵えは鞘師のSさんの作成となりました。

下拵えの完成
下拵えの完成
下拵えの完成

「拵えの作成」・・・・(2)塗・仕上げ
 いよいよ塗の完成と、しとどめ・下緒の取り付けで、塗は江戸時代から代々続くKさんで、しとどめはSさんに金無垢にて作成していただきました。

完成した黒呂色塗鞘合口拵
完成した黒呂色塗鞘合口拵
完成した黒呂色塗鞘合口拵

 そして、今年の10月に多くの方の協力により完成に至りました。 今回の拵えの作成には名古屋支部刀友のTさん支援なくては出来なかったものであり、又、依頼したS刀剣店のSさんの誠実な人柄に安心してお任せする事が出来、ほぼ満足の行く作品に仕上がったことにあらためて感謝するものである。

 なお、今回作成に携った刀剣店・職人さんはすべてイニシャル表示にしておりますが、詳細については名古屋支部までお問い合わせ下さい。

名古屋支部 松本 愼一